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Sun&R.Lab
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·業界考察·6 分で読める

ノンアルコールという "レンズ" — 産業を読み解くもう一つの視点

余白の多い editorial 静物。無印のグラスと一枝のハーブが静かに並ぶ、業界転換点を象徴するイメージ

「ノンアルコール市場」を、市場規模だけで読まない

ノンアルコール飲料市場の話題は、近年、数字で語られることが多くなりました。IMARC Group の予測では年平均 7.7% の成長、サントリーの調査では「健康志向」「若年層」「訪日外国人」の三要因が拡大を支える、Michelin Guide 2026 がペアリングの新評価軸を議論しはじめている。これらは、いずれも重要な観測点だと私たちは考えています。

ただ、これだけを並べて読むと、「ノンアルコール市場が伸びている」という結論で話が止まってしまう。私たちが Sun&R.Lab の三事業を編むなかで気づいたのは、ノンアルコールは 一つの市場カテゴリ であると同時に、複数の産業を読み解くレンズ にもなり得る、ということでした。本記事は、その「レンズとしてのノンアルコール」を、経営の視点から綴ったノートです。

"飲めない" から "飲まないを選ぶ" への質的転換

ほんの数年前まで、ノンアルコールという語の隣には「やむを得ず」という影が寄り添っていました。妊娠中の方、運転される方、健康診断で休肝日を勧められた方。飲めない事情のある方への代替品として、業界はその一杯を扱ってきました。

いま、その前提が静かに反転しつつあると、私たちは観察しています。LVMH 傘下の Moët Hennessy がフランス発のノンアルコール・スパークリング French Bloom へ出資したのは 2025 年のことです。luxury の最前線に、ノンアルコールが置かれ直した瞬間でした。国内でもノンアルビールは二桁成長を観察しており、サントリーの 2024 年 6 月の意識調査が示した三つの拡大要因 ── 健康志向・若年層の嗜好変化・訪日外国人 ── は、すべて「飲まないことを能動的に選ぶ」側の動きを表しています。

私たちは、この転換を「市場規模の話」ではなく、社会の振る舞いが変わりはじめた兆し として読むことにしました。なぜなら、この振る舞いの変化は、ノンアルコール飲料だけでなく、食・観光・産地・健康・働き方といった広範な領域に波及していくはずだからです。

レンズとしてのノンアルコール — 三つの読み筋

ノンアルコールを一つの「レンズ」として手に取ると、いくつかの異なる景色が同時に見えてきます。

第一は、食のレンズ。ペアリングコースのなかで、ノンアルコールを「劣化版」ではなく「対等な体験」として扱えるかどうか。これは料理人・ソムリエの設計力を問う問いであり、店舗のブランド価値を直接的に左右する変数になりつつあります。Michelin Guide 2026 でアドバンスド・ノンアルコールペアリングという語彙が議論されはじめている事実は、その兆候だと私たちは捉えています。

第二は、産地のレンズ。アルコール発酵という時間的プロセスを経ない分、ノンアルコール飲料は原料の個性がそのまま味わいに反映されやすい。日本のように南北 3,000 キロメートルに広がる気候帯と、地理的表示 (GI) 登録 100 品目超の素材を擁する国にとって、これは産地物語を世界へ届ける新しい入口になり得ます。

第三は、観光と健康のレンズ。観光庁の 2025 年第 1 四半期調査では、訪日客の体験消費は引き続き厚みを増しています。宗教的・文化的・健康的理由でアルコールを摂らない方々、運転や長時間の滞在を踏まえて飲み方を選ぶ方々。彼らに「日本でしか味わえない体験」を、アルコールを前提とせずに提供できるかどうか。これは観光産業と健康産業の交差点に立つ問いです。

これら三つの読み筋は、本来は別々の業界の話として語られてきました。ノンアルコールというレンズを通すことで、はじめて同じ平面に並べて議論できるようになる ── これが、私たちが事業を編みながら手に入れた仮説です。

Sun&R.Lab の三事業と、レンズの使い分け

Sun&R.Lab が並列で運営している三つの事業 ── Maison Brand (NEIGE & THÉ) / Non-Alcohol Agency / BizDev ── は、それぞれ異なる角度からこのレンズを使っています。

Maison Brand 事業は、産地のレンズを中心に据えています。日本のテロワールを、ひとしずくに宿らせる商品設計。生産者との長期関係、抽出技術、ボトル内完結の品質保証。「土地でしか生まれ得ない味わいを、世界の食卓へ届ける」という思想を、商品というかたちで実装しています。

Non-Alcohol Agency 事業は、食のレンズと観光のレンズを重ねて使っています。飲食・宿泊事業者の現場で、ノンアルコールを起点としたメニュー設計・客単価設計・インバウンド対応を、伴走のかたちで共に磨いていきます。「ノンアルが売れる時代らしいけれど、何を仕入れ、どう訴求すればよいのか」という現場の問いに、Maison の信用性をレバレッジしながら応えていきたいと考えています。Discovery の途上で、現在いくつかの料飲事業者と対話を進めているところです。

BizDev 事業は、ノンアルコールを直接扱う事業ではありませんが、レンズの使い方そのものを他業界に翻訳しています。電力業界・物流業界・ラグジュアリーブランドのそれぞれに、固有の「能動的選択」が生まれつつある転換点があります。そこを読み解く方法論として、ノンアルコールで磨いたレンズ思考は、私たちのなかで横断的に機能しはじめています。

三事業はバラバラに見えますが、私たちのなかでは「一つのレンズの異なる当て方」として一貫しています。だからこそ、別々の事業として切り離すのではなく、Sun&R.Lab という一つの組織で同時に編んでいきたい ── そう考えることにしました。

レンズが向かう、もう一つの地平

ノンアルコールというレンズを通して見えてくるのは、おそらくノンアルコール市場そのものの可能性だけではありません。日本の食と観光が、これから世界の食卓のなかでどう位置づけられていくか ── その地平への、もう一つの入口でもあると、私たちは仮説を立てています。

産地が、土地の物語をひとくちのなかに織り込む。厨房が、その物語を一夜の体験として編み直す。卓が、その体験を旅の記憶として持ち帰る。家庭の食卓で、もう一度、その物語が芽吹く。レンズが映し出すのは、この循環の構造そのものです。

数字を追うだけでは、この循環は設計できません。Sun&R.Lab は、ノンアルコールという小さな入り口から、もう少し広い地平を編んでいきたいと考えています。Discovery の途上で、ひとつずつ、ゆっくりと。


次回は、このレンズの使い方をペアリング設計の現場でどう実装するかを、五つの軸を切り口に綴ります。

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Sources · 出典

  • · Michelin Guide 2026 — 「アドバンスド・ノンアルコールペアリング」を新評価軸として業界で議論中 (公式 release は fact-check で確認予定)
  • · LVMH × French Bloom 出資ラウンド (2025 公式 release、Moët Hennessy が French Bloom へ少数株式出資)
  • · IMARC Group『Japan Non-Alcoholic Beverage Market Report』2025 年版 (年平均成長率 7.7% 予測)
  • · サントリー『ノンアルコール飲料に関する意識調査』2024 年 6 月発表 (拡大要因として『健康志向』『若年層』『訪日外国人』の3要素を提示)
  • · 観光庁『訪日外国人消費動向調査』2025 年第 1 四半期

Auteur · 著者

中山 光博Sun&R.Lab 合同会社 代表

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繋がりのチカラで、豊かさと幸福が循環する世界を。

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