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Sun&R.Lab
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·商品開発·8 分で読める

レシピ設計という仕事 — 国産素材で、コースの起承転結を編む

フレンチの一皿と、テロワールを宿したノンアルコールのグラスが並ぶ静謐な editorial 写真

レシピ設計を、"商品開発" として読み直す

ペアリングという仕事は、店舗の現場でその場限りに行われるものというイメージがあるかもしれません。料理ができてから、ソムリエがその一皿に合うものを選ぶ。これは確かにペアリングの一面ですが、Sun&R.Lab がいま取り組み始めているのは、もう一段深いところにある 「レシピ設計」としてのペアリング です。

レシピ設計とは、コースの構成と料理の方向性を踏まえて、ペアリングする飲料そのものを共に設計する仕事を指します。料理人とソムリエの感性を、商品設計の上流に持ち込む。これは Maison Brand 事業 (NEIGE & THÉ) の商品開発と、Non-Alcohol Agency 事業の伴走支援を、共に貫いている方法論です。本記事は、その方法論を、具体的なコース構築を例に綴るノートです。

ペアリングの五軸を、レシピ設計の言語に翻訳する

国際ソムリエ協会 (ASI) のペアリング教本では、料理と飲料の組み合わせを 酸度・甘味・苦味・旨味・芳香 の五軸で評価する枠組みが標準的です。これに温度・テクスチャーを加えた七軸で、ペアリングを設計する。これが世界的に共有されている設計言語です。

レシピ設計の仕事は、この五軸を「評価言語」から「設計言語」へ翻訳する作業だと、私たちは捉えています。料理側の特徴を五軸で整理したうえで、それに呼応する飲料を、五軸のどこを共鳴させ、どこを対比させて、どこを洗い流すかという三つの設計手法 (同調・対比・洗い流し) で組み立てる。一つのコースの起承転結に対して、五軸のグラデーションを描く ── これがレシピ設計の中核です。

フレンチコースの場合、料理側の特徴は次のように整理できます。酸度はヴィネグレットやレモンを使う前菜・魚料理で前面に出る。甘味は香味野菜のミルポワや煮込みのフォンで底から支える。苦味はチコリやエンダイブ、グリーンサラダの一片に潜む。旨味はフォン、ブール・モンテ、熟成チーズで層をなす。芳香はブーケガルニ、終盤添えのフィヌゼルブで花咲く。これらに対し、飲料側で五軸を組み立てる作業が、レシピ設計の現場です。

一夜の物語 — 四皿のフレンチに四つの一杯 (構想例)

具体的に描いてみます。星付きフレンチを想定した四皿構成のディナーに、NEIGE & THÉ の四つのラインを組み合わせる 構想例 です。実際のレシピは、共創パートナーの皆様との対話で個別最適化していく前提のシナリオとして読んでいただけたらと思います。

第一皿: 季節野菜のテリーヌとヴィネグレット

ニンジン、ビーツ、菜花、カリフラワーを層に重ねたテリーヌ。仕上げに白バルサミコのヴィネグレット。

ペアリング: Fruits & Veg Line ── 完熟トマト × 国産無農薬イチゴの軽やかな抽出ドリンク

設計の論理: テリーヌの野菜由来の甘味と、ヴィネグレットの鋭い酸度に対し、果実由来の酸と微かな苦味で同調と対比のバランスを取る。トマトの旨味成分 (グルタミン酸) が野菜の旨味を引き上げ、イチゴのフローラルな香気が皿全体に華やかさを添える。冷たい温度帯で提供し、コース冒頭の高揚感を作る。

第二皿: 真鯛の蒸し物、シャンパーニュ風ソース

真鯛のフィレを白ワインで蒸し、ブール・ブランで仕上げたソースを纏わせる。

ペアリング: Tea Line ── 国産煎茶を低温抽出した一杯

設計の論理: ブール・ブランの乳脂肪と、魚の繊細なうま味に対し、煎茶のテアニン (旨味成分) が共鳴し、カテキンの軽い渋味がソースの脂を切り替える。摘採時期が 4 月後半の若い茶葉を選び、低温 (50℃ 前後) で抽出することで、苦味を抑えつつ甘味と香気を引き出す。グラスは白ワイングラスを推奨し、香りの広がりを取る。

第三皿: 鴨の胸肉のロースト、ジュ・ド・カナール

鴨胸肉を低温で焼き上げ、骨から取ったジュをグラスに添える。付け合わせは季節の根菜のグラッセ。

ペアリング: Herbal Line ── 国産ぶどう山椒 × 国産柚子皮の複層抽出

設計の論理: 鴨の肉質と脂、ジュ・ド・カナールの濃縮された旨味に対し、山椒のサンショオール (しびれ成分) が口中の余白を作り、柚子皮のリモネンが香気の上層を担う。山椒は急傾斜地で育ち香気成分が豊かな国産 GI 登録のぶどう山椒を採用。常温〜やや冷たい温度で提供し、料理の温度との対比を演出する。

第四皿: 和栗のモンブランと、ほうじ茶のアクセント

国産和栗のクリームを使ったモンブラン。底にダークチョコレートのテリーヌ、上にメレンゲ。

ペアリング: Infusion Line ── 国産ほうじ茶 × スリランカ産シナモン × 国産ヴァニラの三層抽出

設計の論理: モンブランの濃厚な甘味と、チョコレートの苦味に対し、ほうじ茶の香ばしさが甘味を引き締め、シナモンの樹皮香が長い余韻を作り、ヴァニラの優しさがコース全体に余白を残して締めくくる。三つの素材が時系列で立ち上がる構造を、抽出温度と濃度のチューニングで設計。常温で提供し、デザートの温度コントラストを意識する。

三つの設計手法 — 同調・対比・洗い流し

レシピ設計の現場で、私たちが繰り返し使う設計手法を整理しておきます。これは ASI や WSET の教本で標準的に教えられる枠組みでもあり、ノンアルコール飲料でも同じ三類型が有効だと、私たちは観察しています。

同調型ペアリング: 料理と飲料が似た風味プロファイルを共有し、互いを増幅させる設計。ハーブを使った料理にハーブベースのノンアルを合わせる、というように。香りの方向性を揃えることで、料理の主旋律が強化されます。

対比型ペアリング: 料理にない要素を飲料側で補い、新しい次元を加える設計。脂の重い肉料理に、酸味と苦味の効いたノンアルを合わせる。クリーミーなソースに、ピリッとした山椒の一杯を添える。対比は緊張感を生み、コースに記憶を残します。

洗い流し型ペアリング: 料理の余韻を飲料がリセットし、次の一皿への準備を整える設計。脂や塩味の強い皿のあとに、酸度の高い軽やかなノンアルを差し込む。コース全体の流れをデザインする上で重要な役割を果たします。

NEIGE & THÉ の四つのラインは、これら三類型のすべてに対応できるよう設計しています。ペアリングの意図に応じて、ラインを跨いで選び分けることが可能です。

三事業との関係 — レシピ設計は商品と現場を繋ぐ橋

レシピ設計の仕事は、Sun&R.Lab の三事業の 接合面 で起こります。

Maison Brand 事業 (NEIGE & THÉ) の商品ラインナップは、レシピ設計の素材集として磨かれていきます。「現場でどのように使われるか」を設計の上流に持ち込むことで、商品が単独で存在するのではなく、コース全体の起承転結のなかで意味を持つようになる。

Non-Alcohol Agency 事業では、レシピ設計が 店舗との共創の中心 に置かれます。店舗のシェフ・ソムリエの皆様と、コース料理のなかでの NEIGE & THÉ の最適配置を、五軸と三類型の言語で議論する。これが Agency 事業の核心的な伴走の一つです。

BizDev 事業ではレシピ設計そのものを扱うことはありませんが、「現場と商品を繋ぐ設計言語」をどう作るかという方法論は、他業界にも翻訳可能です。電力業界における「需給と運用を繋ぐ設計言語」、物流における「現場と システム を繋ぐ設計言語」。Sun&R.Lab がレシピ設計で磨いている言語化の作法は、別の業界でも形を変えて使われていきます。

ハイブリッドペアリングという、もう一つの提案

最後に、レシピ設計の射程をもう少し広げてみます。近年、欧米の星付き店では「ハイブリッドペアリング」と呼ばれる手法が広がりつつあります。コースの一部はアルコール、一部はノンアルコール、という組み合わせ提案です。たとえば前菜と魚はノンアル、肉とデザートはアルコール、というように。

この手法の利点は、コース全体のアルコール量を抑えつつ、味覚体験の多様性を確保できることです。健康志向の高いゲスト、運転を控えるゲスト、長時間のディナーで終盤の集中力を維持したいゲスト ── それぞれに対し、アルコールの量を最適化する選択肢を提供できます。NEIGE & THÉ のラインナップは、こうしたハイブリッドペアリングの設計にも柔軟に対応できるよう編んでいます。

レシピ設計は、ノンアルコール単独のコース設計から、アルコールとの併存設計まで、射程の広い仕事です。共創パートナーの皆様と、長期で磨いていきたい領域です。


次回は、レシピ設計の射程をインバウンド体験まで広げて、ノンアルコール × 観光 の戦略を綴ります。

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Sources · 出典

  • · 国際ソムリエ協会 (ASI) ペアリング教本: ペアリングの五軸理論
  • · Hugh Johnson, Jancis Robinson『The World Atlas of Wine』第8版
  • · Le Cordon Bleu Paris『Cuisine Foundations』テキスト
  • · Auguste Escoffier『Le Guide Culinaire』
  • · 農林水産省『地理的表示 (GI) 保護制度』登録一覧
  • · ミシュランガイド 東京 2026

Auteur · 著者

中山 光博Sun&R.Lab 合同会社 代表

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Série · シリーズ

2 部 / 全 2

  1. 01ペアリング設計の五軸 — ソムリエの感性を、ノンアルコールへ翻訳する
  2. 02レシピ設計という仕事 — 国産素材で、コースの起承転結を編むいま読んでいます

繋がりのチカラで、豊かさと幸福が循環する世界を。

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