なぜ Sun&R.Lab は "伴走事業" を持つことにしたのか
Sun&R.Lab は、三つの事業を並列で運営することにしています。Maison Brand 事業 (商品ブランド: NEIGE & THÉ)、Non-Alcohol Agency 事業、BizDev 事業。本記事では、このうちの真ん中 ── Non-Alcohol Agency 事業のかたちを、Discovery 段階の正直さで綴りたいと思います。
そもそも、なぜ Sun&R.Lab はメゾンブランドを作るだけでなく、飲食・宿泊事業者の現場に伴走する事業を持つことにしたのか。理由は、私たちが観察してきた業界のギャップにあります。
サントリー社の 2024 年 6 月調査と IMARC Group の市場予測から、ノンアルコール飲料市場が質的転換期に入っていることは、業界で広く共有されはじめています。けれど、現場の飲食・宿泊事業者の方々から伺うと、この変化に対応する具体的な打ち手が立てづらいという声が多くあります。「ノンアルが売れる時代らしいけど、何を仕入れればいいのか分からない」「メニューに載せたけれど、ゲストへの訴求方法が分からない」「ノンアルの価格設定が分からない」「インバウンド客への提案方法が分からない」 ── 個別店舗の問題ではなく、業界全体としてノウハウが整理されていない領域の問題です。
このギャップを、Maison Brand 事業の商品提供だけで埋めるのは難しい。そう判断して、Agency という伴走の機能を、組織のなかに独立して持つことにしました。
Agency 事業の五領域
Agency 事業の支援は、大きく五つの領域に分かれています。それぞれ、現場の収益性に直結する具体的な打ち手として設計しています。
領域 1: 集客支援。新規顧客を呼び込むための施策を、店舗・施設のブランド世界観に合わせて設計します。試飲会・テロワール体験会・コラボディナーの企画、異業種コラボレーション、Instagram や X などの広告施策、インバウンド向け多言語コンテンツ整備など。観光庁の 2025 年第 1 四半期調査が示すように、訪日客の体験消費は引き続き厚みを増しています。「日本でしか得られない味覚体験」への需要は、Agency 事業の追い風になりはじめています。
領域 2: 単価向上支援。既存顧客の客単価を引き上げるためのメニュー設計・ペアリングコース提案です。3〜7 皿構成のノンアルペアリングコース設計、ボトルとグラスの組み合わせ提案、ラグジュアリー価格帯へのプライシング設計、季節メニューのリフレッシュ周期の設計など。IMARC Group の予測では市場全体の成長率は 7.7% ですが、高単価帯のノンアル市場の成長率はそれを上回ると見られています。「ノンアルを安価な代替として扱うか、ラグジュアリープロダクトとして位置づけるか」 ── この戦略選択が、店舗の収益性を直接左右する局面に入りはじめています。
領域 3: マネタイズ支援。飲食・宿泊以外の収益チャネルを構築する支援です。EC サイトの立ち上げ、オリジナル商品 (店舗ブランドラベル付き) の開発、物販コーナーの設計、LTV 向上施策 (定期購入・コミュニティ・会員制度) など。NEIGE & THÉ は OEM (オリジナル商品開発) の組み立ても視野に入れており、店舗の世界観に合わせたラベルデザイン、特定の素材を使ったレシピ開発などのご相談を、個別協議のかたちで承っています。
領域 4: チームアップ。Sun&R.Lab のネットワークを活用し、店舗・施設の課題に応じた最適なチームを組成する支援です。ソムリエ・シェフのご紹介、地方自治体との連携、生産者ネットワークへのアクセス、関連事業者 (デザイン・PR・撮影・動画制作) の紹介など。Sun&R.Lab 自身が小規模組織であるからこそ、外部パートナーネットワークの厚みが、Agency 事業の競争優位を形成しています。
領域 5: DX・クリエイティブ。IT ツール導入による業務効率化と、ブランド価値を高める制作物の支援です。予約システム・顧客管理ツールの選定、ロゴ・Web サイト・グッズ制作、メニューブック・ペアリング解説資料のデザイン、SNS 運用設計など。Sun&R.Lab が BizDev 事業で培った技術知見と、Maison Brand 事業で培ったブランド設計知見が交差する領域です。
伴走の流儀 — STEP01〜04
Agency 事業の支援は、四つのステップで進める設計にしています。
STEP01: ヒアリング・ご試飲 (約 1 日)。店舗・施設のブランド世界観、料理の特徴、現状の課題、ゲスト層を伺いながら、NEIGE & THÉ のなかから最適なアイテムをご提案・ご試飲いただきます。
STEP02: テスト導入 (最小 6 本から)。お選びいただいたアイテムを、まず最小ロットで導入。ゲストの反応、提供現場のオペレーション負荷、メニューブックでの表現を実地で検証します。
STEP03: 2 週間後レビュー。導入後の実績データ (注文率、客単価、ゲストフィードバック) を確認し、本番導入の判断とメニュー最適化を行います。
STEP04: 集客・マネタイズ支援。本番導入後、五領域のサポートを継続的に提供。オリジナルラベル制作、物販展開、イベント企画、SNS 運用など、収益最大化のための施策を伴走します。
STEP01 (ヒアリング・ご試飲) 自体は最短数日で実施可能です。STEP02-03 (テスト導入と 2 週間後レビュー) までを含めると、ゲストの反応を実地で見極めるため概ね 3〜4 週間ほどお時間を頂戴します。お気軽にお試しいただけるよう、入口を低く設計することを心がけています。
Maison Brand と Agency — 二事業の補完関係
Agency 事業は、Maison Brand 事業 (NEIGE & THÉ) と独立しているわけではなく、構造的に補完し合う関係にあります。
Maison Brand が育てている「テロワールという商品設計の思想」と「生産者ネットワーク」は、Agency 事業が店舗の現場で価値を生むうえでの土台になります。逆に、Agency 事業の現場で得られる料飲現場の手応えと産地接点は、Maison Brand の R&D に流れ戻ります。一方が他方を支え、他方がまた一方を支える ── スタートアップ的に「ピボット」する関係ではなく、根の一つから別々の枝に育っていく関係です。
Discovery の途上で、現在いくつかの料飲事業者や産地と対話を進めているところです。具体的な client 名や個別の事例を語る段階にはまだなく、これからご縁を編んでいく段階にあります。本記事も、Agency 事業の「現時点での設計図」を共有するノートとして、Discovery 段階の慎重さで綴っています。
自治体・観光協会の皆様へ
Agency 事業の射程は、個別店舗だけにとどまりません。地域の観光振興・特産品ブランディングの観点でも、Sun&R.Lab Agency 事業はお役に立てる余地があると、私たちは仮説を立てています。
地域の生産者ネットワークを NEIGE & THÉ のレシピに統合し、その商品を地域内のラグジュアリーホスピタリティ施設で展開する。これは地域全体のブランド価値を引き上げる構造的な企画になり得ます。デジタル庁の『地方公共団体 DX 推進計画』にも見られる通り、地方自治体の観光・地域ブランディング領域では、外部の専門事業者との共創が重要なテーマになりつつあります。Sun&R.Lab は、その共創パートナーの一つとして、自治体・観光協会の皆様とも対話を重ねていきたいと考えています。
規制・コンプライアンス対応も含めた包括支援
ノンアル飲料を新規にメニュー導入される際、避けて通れないのが食品衛生法・食品表示法・景品表示法等の規制対応です。Agency 事業では、こうした法務・コンプライアンス領域でも、適切な情報提供と必要な専門家のご紹介を行います。
NEIGE & THÉ は、原料表示・アレルゲン表示・栄養成分表示・賞味期限表示など、食品表示法に基づく規定をクリアする設計で商品開発を進めています。販売開始時には、法令遵守を確認した状態でお届けする方針です。店舗側でメニューブックや商品案内を作成される際にも、法的に問題のない表現を一緒に確認させていただきます。「健康に効く」「治る」のような薬機法に抵触するグレー表現の回避、「激安」「今だけ」のような景品表示法に注意の必要な表現の見直しなど、ブランド毀損リスクも合わせてサポートします。
一夜の体験を、長期で編む
Agency 事業の最終的な目的地は、「一夜の体験」を長期で編む構造を、店舗の皆様と一緒に作ることだと、私たちは考えています。
ノンアルコール飲料の一杯は、その夜の記憶全体の彩度を決める瞬間になり得ます。ゲストの「飲まない選択」を、劣後ではなく対等な体験として受け止め直す。その積み重ねが、店舗のブランド価値とリピート率を、ゆっくりと変えていく ── そんな未来像を、共創パートナーの皆様と一緒に描いていきたいと考えています。
次回は、Agency 事業の根を支える「産地と素材」のテロワール戦略を綴ります。
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Sources · 出典
- · サントリー『ノンアルコール飲料に関する意識調査』2024年6月
- · IMARC Group『Japan Non-Alcoholic Beverage Market Report』2025
- · 観光庁『訪日外国人消費動向調査』2025年第1四半期
- · 厚生労働省『食品衛生法』および関連通達
- · デジタル庁『地方公共団体DX推進計画』(自治体連携の文脈)
- · Eric Ries『The Lean Startup』(伴走支援の方法論)
Auteur · 著者
中山 光博Sun&R.Lab 合同会社 代表
